アネハツルはモンゴル大平原で繁殖し、誕生3ケ月後の若鳥とともに編隊を組んで8000mのヒマラヤ山脈を飛び越えインド大陸で越冬する。山脈越えの時は上昇気流に乗り一気に乗り越えるが、上昇気流に乗れない編隊は、一度地上に降りて休息をとり、体力を回復し再度挑戦する。飛び越えられない個体は、猛禽類の餌食になることもある。これも自然界の仕組み、掟である。鳥類は気嚢という酸素を効率よく肺に取り込む機能を備えているから、酸素が地上の半分もない8000mの山脈を飛び越えていくことができる。鳥は一部の恐竜から進化したというのが定説になっている。鳥は、恐竜から鳥への進化の途中で気嚢を獲得したのではなく、気嚢を獲得していたから鳥に進化したと考えられている。鳥に進化する前にすでに酸素不足の環境で生き抜く機能、形質を身に付けていたのである。現在の大気中の酸素濃度は21%であるが、恐竜が進化した時代の最低酸素濃度は約12%であったという。この低酸素環境を生き抜くには気嚢を持っていた恐竜が最も適応し、地上の覇者になった。酸素不足という動物にとって厳しい環境が恐竜の進化を促進させたのである。

動物にとって酸素不足は致命的な環境悪化であり、多くの生物が絶滅したが、同時に厳しい環境で生物が進化し多様化していった時代でもあった。化石は厳しい環境が生物の進化を促してきたことを物語っている。人はどうであろうか。ヒトの知能の発達は、考えることで大脳が発達したのではなく、直立二足歩行で前脚が腕になり、手を使用することで、大脳皮質の発達が促されたと考えられている。恐竜は気嚢という特質を獲得し、鳥は翼という特質を獲得し、ヒトは大脳という特質を獲得した。ある特質を獲得し、その特質が環境に最も適応した生き物がその世界の覇者になったと見ることもできる。ヒトに替わるほどの特質を獲得する生物は今後現れるのであろうか。ヒトは低酸素濃度下では生存できない。地球の酸素濃度の変化の歴史を見ると、再び低酸素濃度の時代がくるであろう。その時にはホモ・サピエンスは絶滅しないまでも、地球の覇者であることはないであろう。どんな生き物が覇者になっているのか。地上生活に適応した鳥か・・・・・?