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夏の24時間調査による水質構造の解析

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             夏の24時間調査による水質構造の解析

―風による撹拌効果についてー

静岡県立浜松北高等学校

教諭 辻野兼範

 

要約

佐鳴湖は平均水深が2.0mと浅く、夏の南西の季節風により、水の撹拌現象により垂直混合が進み、成層構造が発達しにくいことが24時間調査によって明らかとなった。午前中は表層と底層の塩分差による密度差が生じて成層構造を形成するが、午前中から吹く南西の季節風により成層構造が崩され、密度差がなくなり、午前中に形成される表層と底層の溶存酸素の差が小さくなり、底層の低酸素水が解消される。リン酸態リンも同様な傾向を示し、底層に停滞することなく上層に移動する。補償深度は約0.6mと浅く、湖水容量の2/3は分解層で、全層クロロフィルaは100μg/L以上もあり、有機物の分解が進み、垂直循環により全層に移動していることが推測される。

1目的

富栄養湖では、夏は成層構造の発達により底層は貧酸素化することがある。佐鳴湖ではこれまで低酸素状態にはなるが、貧酸素化は観測されていない。24時間調査を行い、なぜ貧酸素化が起きないのか、また、昼夜による水質構造の変化を調べることを目的にした。

2方法

調査日は2004年8月13日、14日で、湖内に5地点定点を設け、13日の午前6時から14日の午前6時まで、自作した高さ10cm、容量250mLの小型の採水器で、表層から底層まで垂直に採水した。底泥直上水は重りをつけたセルロースチューブを船上から底まで下ろし注射筒で吸い上げ採水した。現場で水温、pH、透明度、水深を測定し、採水後すぐに溶存酸素(ウインクラー法)測定のため試薬で溶存酸素を固定した。採水後、実験室でワットマンGF/Cでろ過し、化学分析用に凍結保存した。塩素量は硝酸銀滴定法で測定し、塩分に換算した。密度は水温と塩素量から求めた。気温と風速は浜松測候所のデータを用いた。

3結果と考察 中央(湖心)の観測、分析結果を図に示す。

(1)水温、気温は午前6時の24.2℃から午前10時までの3時間で30.7℃までに1.6℃/hの上昇率で上がり、このとき表層水温は午前6時の29.7℃から午前9時には32.8℃へと1.0℃/hの上昇率で上がっている。気温は午後2時に31.6℃と最高気温を示すが、表層水温は午後1時に32.2℃へと少し低下した。 風速は午前9時の1.5m/sから午後3時の7.6m/sへと強くなっている。風向は南西、西南西で佐鳴湖の南北軸にほぼ沿った向きである。表層水温の午前9時までの上昇は、日射による気温上のためで、表層水温が気温上昇にも関わらず午前9時以降上昇していないのは、午前9時より風が強くなり、佐鳴湖は平均水深が2mと浅く、風による湖水の撹拌のために垂直混合が起こり、表層水温は上昇しなかったと考えられる。午後4時45分から午後11時まで表層と底層の水温差はなく、この間、風速は弱くなっていた。翌日の午前2時30分以降は夜間冷却により表層水温は低下し、底層よりも低温になり、この間風速は1.8m/s~2.8m/sと弱く風による撹拌効果はないと考えられる。

(2)塩分と密度 密度は水温と塩分で決まり、表層と底層で密度差が大きいほど、成層構造が発達し、密度差がみられない場合は垂直混合が起きやすい。塩分と密度は経時的に同様の変化を示していることから、密度は水温よりも塩分による効果が大きいと考えられる。午前中から午後1時過ぎまでは表層と底層で塩分差、密度差があり、それ以降午後11時までは差がなく、さらに翌日の午前5時過ぎまで再び表層と底層で差が生じている。午前中の塩分差と密度差の解消は風が強くなる午前9時以降生じている。午後1時以降は、この間密度差がなく、垂直混合が生じていることを示している。夜半以降は表層が低温、底泥直上が高塩分となり、上げ潮による高塩分水の底層流入が考えられる。

(3)溶存酸素 底泥直上水の溶存酸素の最小値は午前9時の3.6mg/Lで、貧酸素水は生じてはいない。表層水との差も午前9時が最も大きく、表層が10.7mg/Lで、その差は7.1mg/Lであった。これ以降、その差は小さくなり、午後4時45分には2.2mgLになり、表層水と底層水の溶存酸素の差は小さくなった。底層水、底泥直上しの溶存酸素の上昇は午前9時以降風力が強くなる時刻と一致し、風の撹拌による垂直混合が生じて、酸素の豊富な表層水が底層に運ばれ、底層の低酸素状態が解消されていったと考えられる。夏は南西の季節風が卓越し、平均水深が約2.0mと浅い佐鳴湖では、底層まで風による撹拌効果があり、垂直混合が起こりやすいと考えられる。もし、風が弱ければ垂直混合も弱く、底層は貧酸素化する可能性がある。

(4)リン酸態リン PO4-Pは夏の成層構造の時、底泥から溶出し底層で値が高くなることが一般的である。午前中、底泥直上水の値が大きく、午後に表層との差が小さくなっている。これは風による垂直混合により底層のPO4-Pが上層に移動したためと考えられる。

(5)透明度と補償深度、クロロフィルa量

透明度の2倍が補償深度で、補償深度より上層が生産層、下層が分解層である。透明度は約0.3mなので水深0.6m以上が生産層でそれ以下が分解層となる。平均水深2.0mの佐鳴湖では下層およそ2/3の水域が分解層と考えられる。クロロフィルaは全層で100μg/L以上と極めて高いが、分解層のクロロフィルaは表層から沈降してきたもので植物性プランクトンの遺骸が多いと推測できる。底層でバクテリアによる有機物分解による酸素消費が進んでも、風による撹拌により全層が混合され、底層に酸素が供給される。そのため有機物の分解は速く進んでいることも推測される。また、有機物分解による栄養塩の回帰も活発に行われていると考えられる。

 

4まとめ

午前中に発達する塩分を主因とする成層構造を、夏の季節風による撹拌効果が崩し、午後から夜半にかけて表層と底層がほぼ均一になることが調査から明らかとなった。風による撹拌効果は、底層に酸素を運び貧酸素化を防ぎ、PO4-Pの溶出を抑制していると考えられる。また、底層から表層にPO4-Pを運ぶことで表層でのプランクトンの増殖を促していることも考えられる。もし、季節風による撹拌効果が弱ければ、底層は貧酸素化し、鰻やカニなどの甲殻類などの底生生物の生存を脅かし、栄養塩類の溶出量が多くなり、冨栄養化がさらに進むと考えられる。平均水深が2.0mと浅い地形的な特徴が、風の撹拌効果を促していると考えられる。

 

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